カリウムの体内動態とTTKG

カリウムの体内動態

  • 体内総K量3000mEq、細胞内に98%
  • 食事から50~100mEq/日を摂取し同量を尿に排泄する。腎が正常なら10~1000mEqまで対応可能
  • 食事で吸収されたKは肝細胞などに速やかに吸収されるため血中濃度は上昇しない。
  • 血漿K濃度は次の2つの機序により調節されている。

急性調節(分~時間)

細胞内外シフト

慢性調節(半日~)

尿中へのK排泄

細胞内外シフトに影響する要素

  • インスリン

 インスリンはNa/H交換輸送体(Na/H exchanger)を活性化させ、流入したNaを外に出すためにNa/KATPaseを活性化する。また、インスリンはNa/K ATPaseの数も上昇させる。結果としてブドウ糖と関係なくカリウムを細胞内に取り込む

  • β2カテコラミン

甲状腺ホルモンやβ2カテコラミンは細胞膜のNa/K ATPaseを活性化して、Kの細胞内移動を促進する。甲状腺ホルモンはNa/K ATPaseの数も上昇させる

  • アルカローシス

 細胞内から細胞外への[H+]の移行→[K+]が細胞内に取り込まれる。

  • 無機酸アシドーシス

Cl-は細胞内に入りにくいため、H+が細胞内に入るときにKが細胞外へ出て行く。対して有機酸アシドーシスの場合はH+と共に陰イオンも細胞内に入りやすいため、Kの放出が起こりにくい。呼吸性アシドーシスの場合もKは上昇しない。

 

細胞外pHと血清K値の関係

 

 

pH7.10

7.20

7.30

7.40

7.50

K欠乏量

血清K

(mEq/l)

5.5

5.0

4.5

4.0

3.5

0mEq

5.0

4.5

4.0

3.5

3.0

100Eq

4.5

4.0

3.5

3.0

2.5

200Eq

4.0

3.5

3.0

2.5

2.0

400mEq

  • 血清K0.5mEq/lの低下は体内K100mEq減少を意味する
  • pHが0.1下がると血清K値は0.5(0.2-1.7mEq/l)上がる。

腎臓でのK調節

   PCT(proximal convoluted tubule:近位尿細管)、TAL,(thick ascending limb:(ヘンレの)太い上行脚)

   CCT(cortical collecting tubule:皮質集合管)、DCT(distal convoluted tubule:遠位尿細管)

   S(secretion:分泌)、R(reabsorption:再吸収)

   ALDO(aldosterone)、ADH(antidiuretic hormone:抗利尿ホルモン)

   MCD(medullary collecting duct:髄質集合管)、ICT(initial connecting tubule:接合尿細管)

≪腎臓でのK排泄≫

  1. 糸球体でろ過されたKは近位尿細管(PCT)で約65%等張性に再吸収される。
  2. Henleループの太い上行脚(TAL)では輸送体により約25%再吸収される。
  3. 腎でのK排泄調整はアルドステロンの作用により遠位尿細管~集合管の主細胞で行われる。K欠乏状態ではK排泄は15mEq/日まで低下できる。(Na再吸収のため0には出来ない)またK過剰状態では>200mEq/日まで排泄可能となる。
  4. 集合管のK排泄は、主細胞の尿細管腔側にあるアミロライド感受性上皮型チャンネル  (ENaC)を介したNa再吸収と吸収されない陰イオン(図中の“X-“)による電気勾配により行われる。
  5. アルドステロンは細胞内のアルドステロンレセプターに結合し以下に作用する
    •  ENaCの開口頻度と、チャンネルの数を増やす。
    •  集合管腔側のKチャンネルの発現を増加させる
    •  血管側のNaKATPaseの発現を上昇させる
  6. X-に当たるのは代謝性アルカローシスのHCO3-や糖尿病でのケト陰イオン(βヒドロキシ酪酸イオン)であり、代謝性アルカローシスや高血糖による多尿ではK喪失の原因になる。

≪皮質集合管でのK排泄に影響を与える重要な因子≫

Na(尿流)の皮質集合管への十分な到達

脱水で減少(←塩分制限を厳しくするとK上昇する)、利尿薬や多尿で促進

尿細管腔内陰性荷電の形成

重炭酸イオン、馬尿酸イオン(トルエン中毒)などの陰イオンの尿中増加

アルドステロン作用の増強

 

TTKG(TransTubular K gradient)

  • 高K血症、低K血症の原因を検索する上で、アルドステロン活性の評価が重要である。
  • 理論的には皮質集合管終末部のK濃度がアルドステロン活性を反映するが、この部分のK濃度を直接測定できない。
  • 従って、皮質集合管以降で再吸収される水分量を考慮して最終尿中K濃度を補正し、血漿K濃度との比を表したTTKGが臨床的に用いられている。
  • この指標は以下の仮定が前提となっている。

     (1)髄質集合管ではKの分泌および再吸収は起こらない

     (2)皮質集合管終末部での尿浸透圧が血漿浸透圧とほぼ等しい(ADHが正常に働いている)

  • (1)仮定が成り立つならば、髄質集合管で自由水の再吸収が起こるとき、最終尿中のK濃度は皮質集合管のK濃度よりも高くなる。また(2)の仮定に基づくと、この濃縮の効果は、最終尿と血漿の浸透圧比に反映される。
  • 尿中K濃度を尿中/血漿浸透圧の比で割った値が、間接的に皮質集合管腔のK濃度を示すことになる。
  • 例えば尿中浸透圧と血漿浸透圧の比が3の場合、皮質集合管を通過した尿量の2/3にあたる自由水が再吸収され、最終尿中K濃度は皮質集合管腔の3倍になっていると考える。
  • TTKGの意味するところは皮質集合管終末部のK濃度と血清K濃度の比である。

TTKG={尿中K濃度÷(尿浸透圧/血漿浸透圧)}÷血漿K濃度

   =(尿中K濃度×血漿浸透圧)/(血漿K濃度×尿浸透圧)

註)この式は尿中浸透圧が血漿浸透圧よりも高く(低浸透圧尿の場合は(2)の前提が成り立たない)、また尿Na濃度>25mEq/lであるときにのみ利用可能。つまり、脱水と多尿(薄い尿)の時には使えない

 

≪高K血症の場合≫

  • 通常の食事を摂っている成人ではTTKGは8~9である。
  • 過剰なK負荷がある場合は、尿中のK分泌増加を反映してTTKGは11程度まで上昇する。従って、高K血症があるにもかかわらず、TTKGが7以下、特に5以下に低下している場合は、アルドステロン作用の低下が強く疑われる。(アルドステロン濃度測定、診断的治療としてミネラルコルチコイド投与が有用)
  • 有効循環血液量低下による高K血症ではアルドステロン分泌は亢進しており、TTKGは7~9程度に保たれる。但し、腎血流が低下しているため総K排泄量は減少する。

≪低K血症の場合≫

  • 低K血症にもかかわらずTTKG>10以上の高値の場合は、腎性K喪失、特にアルドステロンの過剰作用を疑う
  • 利尿薬を多用した場合の低K血症ではTTKGは正常かやや高値程度で10は超えない。
  • TTKGが低下している場合は低K血症の原因が腎外にあると考える。下痢や嘔吐に伴う大量のK喪失を疑う。
  • 高齢者などで慢性的なK欠乏でもTTKGは低下する。

注)

TTKGの概念は1986年にHalperinらにより提唱されたMiner Electrolyte Metab.1986;12:234)

が、2011年には同じ著者により否定されたCurr Opin Nephrol Hypertens.2011;20:547)。したがって、今後は使わないほうがよいようである