慢性腎臓病(CKD)

  • 本邦でも年間約3万人が新規透析導入されており、今後更に増加すると予想されている。
  • 透析患者数の増加に伴う医療費は年々嵩む一方であるため、可能な限り早期に腎疾患・腎障害を認識・発見し透析導入を阻止することが重要である。
  • この考えの下CKD分類が提唱された。
  • CKDとは「GFR<60 ml/min/1.73m2のまたは血液、尿、画像所見から腎障害の存在が明らかな場合が3ヶ月以上持続すること」と定義される。
  • 特別に疾患が無くても30~40歳頃よりGFRは年齢と共に低下し、日本人でのデータでは0.35ml/min/1.73m2の割合で低下する。
  • GFR低下を認めていなくともCKDステージ1としてCKDに含めることで、より早期の段階から腎障害を認識するべきであると考えられるようになった。

慢性腎臓病の原因

  • 慢性腎臓病では既に腎萎縮のため腎生検が出来ないことがほとんどである。臨床経過、合併症、血液検査等の間接的な指標で原因が推測できる場合もあるが、原疾患不明の慢性腎不全として治療を行っていることも多い。
  •  原因として多いのは腎硬化症、糖尿病性腎症、IgA腎症をはじめとする慢性腎炎、特発性膜性腎症/巣状糸球体硬化症などのネフローゼ症候群、腎動脈狭窄、多発性嚢胞腎である。

慢性腎臓病の管理

  • 全CKD患者に禁煙と肥満を避けること、塩分制限(NaCl<6g/日)が求められる。
  • 塩分制限により高血圧のコントロールや水分管理が容易になる。
  • stage3以上では蛋白制限も必要となる。概ね0.6~0.8g/kg標準体重とする。蛋白制限により腎機能進行が抑制され同時にリンの摂取制限にもなる。
  • ただし、厳密に守る患者ほど低栄養に陥りやすくなるため十分なカロリー摂取を行う。必要カロリーは活動度に応じて30~35kcal/kg標準体重程度である。
  • 高カリウム血症、高リン血症合併時にはこれらの制限も行う。
  • 飲酒は適量なら可能。
  • 運動もCKDが安定していれば5.0~6.0METsまでは良いとされる。
  • インフルエンザや肺炎球菌のワクチン接種も推奨される。薬物療法としては以下を参照にする。

①高血圧 

  • 起床時、就寝前の家庭血圧の測定を推奨する。
  • 降圧目標として,尿蛋白1 g/日未満の場合には130/80 mmHg 未満が,1g/日以上の場合には125/75 mmHg 未満が推奨される。
  • 降圧薬はアンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE-I)もしくはアンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)を第一選択薬とする。
  • 降圧目標が達成できないときは利尿薬やCa 拮抗薬などの第二選択薬の併用を考慮する。
  • ACE-I/ARBは全ての糖尿病性腎症stageで腎障害の進行を抑制する。また非糖尿病性CKD でもACE-I/ARBは用量依存性に蛋白尿を減少させ腎機能障害の進行を抑制する。ACEI とARB の優劣は明らかではないが,両者の併用療法は蛋白尿の減少に有効である。
  • 但し、蛋白尿を伴わないCKDに対しての腎保護作用は確立していない。 
  • 蛋白尿減少やCVD の発症抑制の観点から,高血圧を合併しないCKD においてもACE-I/ARBを投与すべきである。しかし収縮期血圧110mmHg 未満では腎機能予後が不良とする報告もあり過剰降圧には注意する。
  • 高度の腎障害(stage3~5) のCKD においても末期腎不全への進行を抑制する。
  • 腎機能障害の進行抑制は,投与前の腎機能障害が高度なほど効果が大きい(Kidney Int.1996.50(5)1651-8)
  • 血清Cr が投与前値の2 倍に達してからもARB を継続投与すると,末期腎不全への進行が30% 抑制される(RENAAL study)とする報告もある。従ってACE-I/ARBは副作用がない限りCKDのステージにかかわらず継続投与を行う。
  • 急激なCr上昇が見られる場合(投与後のCr上昇率>30%)は減量/中止を検討するが腎動脈狭窄、NSAIDs投与、心不全、脱水などが潜んでいることがあり検索が必要である。
  • 高K 血症に注意を要するものの,十分なレニン・アンギオテンシン系阻害のため抗アルドステロン薬を追加すると,さらに蛋白尿が減少する。ただし高K血症には注意が必要で、糖尿病性腎症およびCCr <50 mL/min/1.73 m2 のCKD 患者には禁忌である。
  • 降圧療法により蛋白尿減少(6 カ月以内の30%以上減少)と投与開始直後のGFR の軽度低下(4 カ月以内の血清Cr上昇率30%程度の上昇)が見られたときは、その後の腎機能進行抑制の目安となる。

②高脂血症

  •  脂質異常改善もGFR低下の進行抑制効果があるとされる。LDL-C120mg/dl以下を目標にし、可能なら<100mg/dlを目指す。HMG-CoA reductase inhibitor(スタチン系)を中心に使用する。スタチンには微量アルブミン尿を減らす効果もある。フィブラート系はGFR低下患者には使用禁忌である。

③代謝性アシドーシス

  •  目標HCO3濃度 20~24mEq/lになるよう、重曹 1.0g~3.0g/日を経口投与。

④高カリウム血症

  • K<5.5mEq/lを目標にカリウム摂取制限(生野菜、芋類、豆類、干物、果物に多い)を行う。
  • 効果が不十分ならカリウム吸着剤であるカリメート®やアーガメイト®を使用する。
  • 糖尿病患者は高血糖やⅣ型RTAにより高K血症になりやすい。
  • ACE-I/ARB投与も高K血症になるが他の対処でコントロール可能なら投与を継続する。
  • 過度のK摂取制限で低Kになることもあり注意が必要である。
  • また、塩分制限が過剰になると高K血症をきたしやすい。

⑤貧血

  • 腎性貧血はStage3以降のCKDで増える(Arch Intern Med. 2002;162:1401)。エリスロポエチン産生低下、尿毒症による造血障害/赤血球寿命の低下が原因である。
  • CKDでは胃粘膜障害や消化管出血を合併することも多いため鉄欠乏性貧血の評価も必要。
  • 腎性貧血の治療はCCr<30ml/min、Hb<10g/dlの場合、エポエチンアルファベータ6000国際単位を週1回皮下注。効果が認められたら維持療法として6000~12000国際単位を2週に1回投与を継続する。目標値は10~12g/dl。Hb>13g/dlにはならないようにする。ダルベポエチンアルファを使用する場合は30μgを2週に1回、皮下注射または静脈内投与。維持療法は30-120μgを2週ごと、または60~180μgを4週ごと。
  • エリスロポエチンの効果で鉄欠乏が顕在化することもある。鉄欠乏を合併している場合は鉄剤投与も行う。フェリチン>100ng/mlかつ鉄飽和率(sFe/TIBC)>20%を目標にする。

⑥高P血症

  •  目標P 3.5~5.5mg/d、Ca×P≦55を目標にCaCO3経口投与。

⑦低Ca血症

  • 補整Caが基準値内になるようCaCO3や活性化ビタミンD製剤を経口。

      (補整Ca(mg/dl)=Ca(mg/dl)+4.0-アルブミン(g/dl))

⑧高尿酸血症

  • CKDでは糸球体濾過量減少と利尿薬使用による体液量減少で、近位尿細管尿酸再吸収増加によって上昇が見られる。この高尿酸血症が腎機能低下を促進するかについては証拠が乏しいが、高尿酸血症をアロプリノールで治療したところ腎機能低下を抑制したとする報告もある。(Am J Kidney Dis 2006;47:51)
  • 尿酸<9mg/dlを目標にアロプリノール50~100mg/日を投与する。腎機能に応じた減量が必要である。
  • 新しい治療薬であるフェブキソスタットはより尿酸低下効果がつよい。

⑨高窒素血症

  • おおむねGFR<30のCKD患者では進行抑制目的に尿毒症物質吸着薬であるAST-120(クレメジン®)の食間経口を考慮する。
  • CKD患者ではもともと大量の内服薬が投与されていることが多く、さらにクレメジンは1日30カプセルを飲まないと効果が見込めないため患者の十分な理解と協力がないと服薬コンプライアンスを維持しにくい。他の腎不全療法を行いながら服用すると透析時期が遅らせることができることを十分説明し、必要に応じて内服しやすいようなアドバイスを行う。
  • 開始時15カプセルを1~2週間続けてから増量。30ml位の水で3~5カプセルずつ下向きの姿勢で内服。カプセルを出して水と混ぜストローで内服。一日の内服を5~6回に分割するなどである。

⑩浮腫と心不全

  • 塩分制限(6g<日)が基本である。
  • 水分を制限するときに塩分を制限せずに水分制限を強要しても、「塩分摂取→浸透圧上昇→口渇による飲水」の強力な生理反応に反するため成功しない。水分は無理な制限をせずに塩分制限を行えば水分摂取を最小限に出来る。
  • ループ利尿薬経口投与も行う。フロセミド160mgまで増量可能。利尿薬で治療不可能の場合は血液透析やECUM(Extra-Corporeal Ultrafiltration Method:限外濾過)などにより過剰な水分を除去する。

⑪その他の薬物療法

  • 慢性腎炎では糸球体硬化への進展過程には糸球体内血液凝固の亢進などが存在するため、出血傾向がなければコメリアン®やペルサンチンL®の経口投与を検討する。