急性腎不全

急性腎不全とAKI

  • 急性腎不全とは「数時間から数日の経過で腎機能の急激な低下を来たし、急速に体液恒常性維持が困難となった結果、高窒素血症、溢水、高K血症、代謝性アシドーシスが発生した状態」である。

統一された定義はないが次のいずれかに該当するものと考える。

  1. 血清Cr値が2.0~2.5mg/dlに急速に上昇
  2. 基礎に腎障害がある場合、血清Cr値50%以上の上昇。
  3. 血清Cr値が1日あたり0.5mg/dl以上、またはBUN10mg/dl以上の上昇
  • しかし、以上の基準を満たさないわずかな腎機能低下が生命予後に影響し早期介入が必要であるという認識が高まってきた。
  • そのため糸球体濾過量の低下、または尿量減少のいずれかのみで早期の腎障害を発見できる診断基準が作成された。
  • これは従来の急性腎不全と比較し、より広く早期の腎障害を捉えることから急性腎障害(Acute Kidney Injury:AKI)と呼ばれる。

AKIは以下に定義される。

「急激(48時間以内)に腎機能が低下(血清Cr値0.3mg/dl以上上昇、もしくは血清Cr値が1.5倍以上に上昇)または尿量0.5ml/kg/hr以下が6時間以上持続。但し尿量のみで診断する場合は体液量が適切であることを前提とする」

  • この定義は集中治療中に発生する急性腎障害の早期発見の観点から作成されてきた経緯がある。
  • そのため従来の急性腎不全より広義の腎障害を含む反面、従来は急性腎不全として扱われてきた疾患の一部で除外されたものもある。「48時間で判定」することにより、これよりやや緩徐の上昇する間質性腎炎や急速進行性糸球体腎炎が除外される。
  • 従って必ずしもAKI>急性腎不全ではないことには注意する。

AKIの分類

AKIN分類(Acute Kindey Injury Network 2007)

stage

血清Crによる分類

尿量による分類

Stage1

1.5倍以上の上昇

または0.3mg/dl以上の上昇

0.5ml/kg/hr6時間以上継続

Stage2

2倍以上の上昇

0.5ml/kg/hr12時間以上継続

Stage3

3倍以上の上昇

または血清Crの前値が4.0mg/dl以上かつ0.5mg/dl以上の急激な上昇

または血液浄化療法施行

0.3ml/kg/hr24時間以上継続

または

無尿が12時間以上持続

RIFILE分類(ADQI:Acute Dialysis Quality InitiativeによるRisk、Injury、Failure、Loss、End-stage renal failure分類)

 

糸球体濾過率(GFR

尿量

Risk

血清Cr1.5倍に上昇

またはGFRの減少>25

尿量0.5ml/kg/hr以下が6時間

Injury

血清Cr2倍に上昇

またはGFRの減少>50

尿量0.5ml/kg/hr以下が12時間

Failure

血清Cr3倍に上昇

またはGFRの減少>75

または血清Cr4mg/dl以上

尿量0.3ml/kg/hr以下が24時間、

または無尿が12時間

Loss

急性腎不全が4週間持続

ESKD

腎不全が3ヶ月以上持続

KDIGO分類

stage

血清Crによる分類

尿量による分類

Stage1

1.5~1.9倍の上昇

または0.3mg/dl以上の上昇

0.5ml/kg/hr6~12時間以上継続)

Stage2

2.0~2.9倍の上昇

0.5ml/kg/hr12時間以上継続

Stage3

3倍以上の上昇

または血清Crの前値が4.0mg/dl以上

または血液浄化療法施行

またはeGFR<35ml/min/1.73m2(18歳未満)

0.3ml/kg/hr24時間以上継続

または

無尿が12時間以上持続

AKIの鑑別診断

  • 腎後性腎不全・腎前性腎不全・腎性腎不全の鑑別を行う。
  • 腎後性腎不全は泌尿器科疾患(尿路結石や前立腺肥大など)の疾患の既往、突然の無尿などで疑い、超音波検査で診断は容易。
  • 一方腎前性と腎性の区別は超音波で必ずしも明確でない。
  • 腎前性は脱水や低血圧につながる状況(嘔吐、下痢、発熱など)や脱水(細胞外液量減少)の身体所見が大事である。
  • 腎性は動脈硬化性疾患の有無(コレステロール塞栓、正常血圧性虚血性AKI)、腎毒性をもつ薬剤の曝露歴が大事である。
  • 正常血圧性虚血性AKI(Normotensive Ischemic AKI: N Engl J Med 2007; 357:797-805)は血圧低下が軽いにも関わらず、急速にGFRが低下しAKIを生じる病態で輸入細動脈の拡張不全または輸出細動脈の拡張による腎潅流不全が原因である。動脈硬化、CKDの存在、重症感染症、造影剤、NSAIDs投与などがリスクになる。
  • 発生する場所により頻度が違うことも参考になる。院外では腎前性が70%と圧倒的に多い。腎後性20%、腎性10%である。院内発生のAKIでは急性尿細管壊死(ATN: Acute Tubular Necrosis)が多い。ICU以外の院内では腎性が55%(ATN40%)、腎前性30%腎後性15%である。ICUでは腎性80%(急性尿細管壊死75%)、腎前性20%である。
  • AKIでは乏尿であることが多いが尿所見は鑑別に最も大事である。腎性腎不全では尿蛋白、潜血、円柱など多彩な尿所見が認められる。ナトリウム排泄率(FENa)は利尿薬で強制的に高値となるため、利尿薬の影響を受けない尿素窒素排泄率(FEUN)を指標とする。

腎前性急性腎不全 腎性急性腎不全 
尿所見 軽微な変化 尿蛋白・尿潜血・円柱
尿比重 >1.020 1.010程度
尿浸透圧(mOsm/kgH2O) >500 300程度
クレアチニン比(尿/血清) >40 <20
血清BUN/クレアチニン比 >20 <10~15
尿中Na濃度(mEq/l) <20 >40
FENa(%) <1 >1
FEUN(%) <35 >35
補液による尿量 増加 不変

腎後性腎不全

  • 尿路閉塞を意味する。
  • 腎結石症、凝血塊、後腹膜疾患(後腹膜線維症など)、癌腫(子宮頚癌が多い)による尿管閉塞、膀胱閉塞(結石、前立腺肥大、神経性/薬剤性の機能的膀胱閉塞、包茎、尿道閉塞などが原因となる。

腎前性腎不全

  • 出血、下痢/嘔吐、利尿薬過剰使用による腎からの喪失、大量発汗、浸透圧利尿(高血糖など)、などの“絶対的”循環血液量減少
  • 心機能低下(心筋症、高血圧性心疾患、心臓弁膜症、重症肺高血圧症、心タンポナーデ、重症肺塞栓)、陽圧換気、肝硬変/肝不全(肝腎症候群)、全身の血管抵抗低下(敗血症、薬物による不適切な血管拡張、自律神経障害、麻酔、アナフィラキシーショック)、副腎機能不全、血管外分画への移動(膵炎、腹膜炎、外傷、熱傷など)、腎循環不全(腎動脈狭搾、NSAIDs、シクロスポリン、タクロリムス、高Ca血症、ACE-I/ARB、アンホテリシンB、エピネフリン、ノルエピネフリン)などの“有効”循環血液量減少である。
  • 腎循環不全は血圧が正常範囲のわずかな低下でも起こりうるため、この病態の認識が無いと腎前性腎不全を放置した結果急性尿細管壊死を引き起こす可能性がでてくる。

腎性腎不全

  • 腎性腎不全は腎実質のどの部分に障害が及ぶかで分類できる。
  • 脈管系では動脈(心臓や動脈瘤などからの塞栓による腎動脈閉塞、腎動脈解離、大中レベルの動脈の血管炎)、細動脈(コレステロール塞栓、血管炎、強皮症腎、悪性高血圧、敗血症性塞栓症)、腎静脈(塞栓症、圧迫)が原因となる。
  • 動脈の突然の閉塞によるものは側腹部痛、腹痛、血尿、発熱、血尿、組織崩壊による血清LDH上昇がみられる。
  • 糸球体病変では急性増殖性糸球体腎炎(免疫複合体型、ANCA関連血管炎、抗GBM抗体型、ループス腎炎)、血栓性微小血管症(HUS、TTP、HELLP症候群)、単クローン性免疫グロブリン沈着症(L鎖病、H鎖病、アミロイドーシス、Fibrillary/Immunotactoid腎症)、放射性腎炎
  • 尿細管病変では急性尿細管壊死(虚血性、腎毒性物質:造影剤、抗菌薬、化学療法薬、シクロスポリン、有機溶媒、アセトアミノフェン、横紋筋融解症、溶血、尿酸、シュウ酸塩)色素沈着性腎症(ヘモグロビン、ミオグロビン)、結晶沈着(薬剤性、尿酸)、骨髄腫腎、浸透圧性腎症(デキストラン、マンニトール、免疫グロブリン、ショ糖)が原因となる。
  • 運動後急性腎不全(ALPE:Acute renal failure with severe Loin pain and Patchy renal ischemia after anaerobic Exercise)という疾患概念が報告されている。(日内会誌2010;99:970)若年者の無酸素運動後1~48時間に背部痛を伴う急性腎不全が生じる。CK/ミオグロビンは正常~軽度上昇に止まり、尿色正常の非乏尿性腎不全であるため見過ごされることもある。多くは14日以内に回復するが、尿管結石、腰痛症と誤診され疼痛に対してNSAIDsを使うと、腎不全が悪化するため注意が必要。腎性低尿酸血症が背景にあることが多い。しばしば再発を繰り返す。
  • 間質性病変では薬剤性間質性腎炎(H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害薬、アロプリノール、抗てんかん薬、利尿薬、βラクタム、サルファ薬、トリメトプリム、リファンピシン、NSAIDs、カプトプリルなど)、感染誘発性間質性腎炎(ウイルス、細菌、結核、リケッチア)、全身性疾患に伴うもの(サルコイドーシス、シェーグレン症候群、SLE)、悪性腫瘍の浸潤、特発性がある。

AKIの治療

  • 原疾患に関わらず最初に対処すべきは、重篤な尿毒症、高カリウム血症、心不全、代謝性アシドーシスなどの合併症である。
  • 腎毒性のある薬剤投与を中止し、補液ルートの確保、血行動態(血圧/尿量/中心静脈圧/SpO2)のモニタリングを行う。合併症が重篤な場合には緊急の血液透析を検討するが、血液透析の準備には最低でも1~2時間は必要になるのでまずは保存的治療が優先される。
  • 重篤な代謝性アシドーシスは腎不全以外の原因(組織低酸素による乳酸アシドーシスなど)も合併していることも多くこちらの対処が優先されるが、対症療法としてはpH7.2を目標にした重炭酸投与が行われる。
  • Na負荷に注意し循環血液量増加が問題になるなら利尿薬投与や血液透析も検討する。メイロン注®(7%NaHCO3、HCO3- 0.83mEq/mlを含有)を使用。HCO3-欠乏量(mEq)=(20-測定HCO3-)×0.5×体重(kg)で計算する。欠乏量の1/2量を初期量とし1時間かけて経静脈点滴投与。以後動脈血pHとHCO3-をモニターしながら更に半量ずつ補充。ただし、利尿が期待できない場合はナトリウム負荷になるため、透析療法を考慮。緩やかな補整で十分な場合は、炭酸水素ナトリウム2~4g/日を経口投与する。
  • 高K血症はアシドーシスの補正と共に改善することが多い。高K血症で血液透析の適応となるのは心電図変化を伴う進行性かつ高度の高K血症(K>7mEq/l)でCa製剤やインスリン投与などに反応しない乏尿患者である。最初の1~2時間で1~2mEq/lの低下が期待できる。
  • 心不全を含めた乏尿患者ではまず循環血液量と血圧の維持を優先する。中心静脈圧(CVP)8~12mmHgに達するまでは等張液輸液(低Alb血症が合併しているときアルブミン製剤の併用も可能)を行う。
  • これに低血圧(収縮期圧<90~100mmHgまたは平均動脈圧<65mmHg)を合併しているときはdopamineやdobutamineまたはnorepinephrineを用いて昇圧する。
  • Dopamineは昇圧や尿量確保には有効であるが、以前言われていた少量dopamine投与の腎保護作用は否定された。
  • Norepinephrineは敗血症性ショックでは昇圧と腎機能回復に有効である。目標血圧は利尿を参考にするが腎局所の潅流不全(前述のNormotensive ischemic AKI)の可能性がある場合は平均血圧100mmHg以上が必要かもしれない。
  • 循環血液量と血圧が維持されている場合はfurosemide100mg~200mgのボーラス投与を行う。少量からの漸増は時間がかかるだけでメリットがない。
  • これで尿量が確保できなければ利尿薬に反応しないと判断し血液透析等を検討する。反応するなら持続投与も検討する。Furosemide 10~100mg/hrで調整する。利尿薬投与で腎保護や透析回避の証拠はないとされるが、禁忌であるとの証拠も乏しい。
  • AKIではさまざまな輸液や栄養投与を行わなければならないため輸液過剰になりやすいので利尿薬で乏尿が回避されれば輸液が容易になり、心不全による透析導入も遅らせることも期待できるため試みる意義はある。利尿薬に反応が見られないときは輸液は極力絞り回復を待つ以外に方法はない。
  • 尿毒症で痙攣、意識障害(無関心、記銘力低下、集中力低下)等の中枢神経症状、心外膜炎が見られるときは緊急透析の適応となる。
  • BUN60mg/dl以上の時には本症の可能性がある。薬剤性脳症の可能性も考慮する。治療は血液透析を1回1時間、1日3回など短時間頻回に行う。薬剤性脳症は投与された薬剤の排泄遅延、腎不全による薬剤の蛋白結合率低下により起こりやすくなる。症状は傾眠、昏迷、幻覚、痙攣、不随意運動であり、βラクタム剤、新キノロン剤、H2blockerが比較的多い。肝排泄型の薬剤でも本症を起こし得る。治療は原因薬剤の中止で中止後36時間以内に改善がなければ透析を行う。  
  • 栄養療法も大切であり十分な栄養投与を行う。可能な限り経腸栄養を優先し、エネルギー20~30kcal/kg/日、蛋白0.8~1.2g/kg/日(透析導入後は1.0~1.5g/kg/日)必要である。塩分は5g/日程度とする。高K血症や溢水傾向がみられればK・水分制限の食事にする。輸液の場合、K・Pなしの高カロリー輸液を行う(ハイカリックRF注®や50~70%グルコース液)を利用して輸液メニューを組み立てる。
  • 出血性胃炎/胃潰瘍の合併頻度が高いためH2ブロッカー、粘膜保護薬などの予防投与を考慮する。貧血は血行動態に悪影響を与えるので積極的に治療する。Hb10g/dlを目安に輸血を検討する。1日2単位を限度に1単位1時間以上かけてゆっくり行う(透析を行うときはこの限りではない)。溢水のあるときは希釈による影響を考慮する。
  • 血液透析の適応を要約すると以下のようになる。
  1. 尿毒症性脳症のあるとき。
  2. 利尿薬に反応せず除水が必要なとき(溢水状態の持続・心不全・肺水腫)。
  3. 電解質の補正が困難の時(K>6mEqが持続)。
  4. アシド-シスが持続、進行するとき(BE<-10)。
  5. 発症後72時間を経過しても、利尿がつかないとき。
  6. 肝不全の合併のあるとき。
  7. 慢性腎不全を基礎にして発症し代償期への回復の見込みが無いとき。BUN、血清Cr値での適応は慢性腎不全の時の様な明らかな適応基準はなく、諸家によりBUN60~130mg/dl以上と差が大きいが、BUN100mg/dlが1つの目安と考える。上昇の速度も考慮する。
  • これらと同時に原因疾患に応じた治療を行う。
  • 急性腎不全の回復期には大量の利尿がつくことがあり利尿期と呼ばれる。
  • 出た尿量だけ補充する“尿量追いかけ輸液”が行われる。“尿量追いかけ輸液”とは禁食管理と仮定して、4時間で出た尿量分の輸液を次の4時間で補う方法である。
  • 例を示す。
  1. 高カロリー輸液を(ハイカリックRF®+ネオアミュー®) 700ml / 24hで行う。
  2. 尿量4時間毎チェック
  3. (前の4時間尿量)-120mlを計算する。120mlは高カロリー分の輸液量である。
  4. 計算がプラスなら次の4時間で1号液を側管から負荷する。マイナスなら次の4時間は付加しない。
  5. 上記を4時間毎に繰り返す。
  • “尿量追いかけ輸液”を行っていると出るから入れているのか、入れるから出るのかわからなくなることがある。利尿期の多尿は体液過剰に陥っている状態からの適切な利尿と考えてもよくバイタルを評価しながら1/2~2/3程度の補正に留めてもよい。