心サルコイドーシス

病変の拡がりと臨床症状

  • 心サ症は心室中隔基部から病変が生じるとされる。
  • 病変の拡がりにより臨床症状も変化する。

 

A:心室中隔基部に限局した小さな病変の場合は無症状なことが多い。

B:心室中隔の病変が大きくなると伝導障害が起こる。

C:リエントリー回路に肉眼腫や線維化を生じると心室頻拍などが生じる。

 

D:左室や右室自由壁に病変が及ぶと心不全が生じる。伝導障害や心室頻拍合併もありうる。

J Am Coll Cardiol. 2016;68:411

 

心サ症の診断基準

≪サルコイドーシスの診断基準と診断の手引き2015 心臓病変を強く示唆する臨床所見

心臓所見(徴候)は主徴候と副徴候に分けられ、以下の1)または2)のいずれかを満たす場合、心臓病変を強く示唆する臨床所見とする。

  1. 主徴候5項目中2項目以上が陽性の場合。
  2. 主徴候5項目中1項目が陽性で、副徴候3項目中2項目以上が陽性の場合。

心臓所見

(1) 主徴候

 (a) 高度房室ブロック(完全房室ブロックを含む)または持続性心室頻拍

 (b) 心室中隔基部の菲薄化または心室壁の形態異常(心室瘤、心室中隔基部以外の菲薄化、心室壁肥厚)

 (c)左室収縮不全(左室駆出率50%未満)または局所的心室壁運動異常

 (d)Gallium-67 citrateシンチグラムまたはfluorine-18 fluorodeoxygluose PETでの心臓への異常集積

 (e) Gadolinium造影MRIにおける心筋の遅延造影所見

(2)副徴候

 (a) 心電図で心室性不整脈(非持続性心室頻拍、多源性あるいは頻発する心室期外収縮)、脚ブロック、

   軸偏位、異常Q波のいずれかの所見

 (b)心筋血流シンチグラムにおける局所欠損

 (c)心内膜心筋生検:単核細胞浸潤および中等度以上の心筋間質の線維化

 

付記:

  1. 虚血性心疾患と鑑別が必要な場合は、冠動脈検査(冠動脈造影、冠動脈CTあるいは心臓MRI)を施行する。
  2. 心臓以外の臓器でサルコイドーシスと診断後、数年を経て心臓病変が明らかになる場合がある。そのため定期的に心電図、心エコー検査を行い、経過を観察する必要がある。
  3. 心臓限局性サルコイドーシスが存在する。
  4. 乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫が、心内膜心筋生検で観察される症例は必ずしも多くない。従って、複数のサンプルを採取することが望ましい。
  5. Fluorine-18 fluorodeoxygluose PETは、非特異的(生理的)に心筋に集積することがあるので撮像条件に注意が必要である。

国際的には2014年に最初に診断基準が提唱された。

≪心サ症診断のための専門家同意による推奨事項≫

組織学的または臨床的診断で行う。

1、心筋からの組織診断。

心サ症は心筋組織生検により非乾酪性肉芽腫を証明することにより診断する。但し、病原体に対する染色などで他疾患を除外が必要である。

 

2、臨床診断

以下の条件を満たせば、心サ症を考慮する。

a)心以外の組織によりサ症と診断されている。

かつ

 

b)以下の7項目中1項目以上を満たす。

 1、ステロイドや免疫抑制剤に奏功する心筋症または伝導障害

 2、原因不明の左室収縮障害(LVEF<40%)

 3、原因不明の持続性心室頻拍(自然発症または誘因あり)

 4、MobitzⅡ型またはⅢ度房室ブロック

 5、FDG-PETで心サ症に合致する部分的な集積

 6、心臓MRIで心サ症に合致する造影遅延

 7、心サ症に合致するガリウムシンチでの集積

かつ

 

c)他の原因が除外される

心サ症の治療

  • 治療の目的は炎症と線維化を抑制し、心臓の構造破壊や機能低下を防止することである。
  • 房室ブロック、心室頻拍などの重症心室性不整脈、局所壁運動異常あるいは心ポンプ機能の低下では副腎皮質ステロイドの全身投与が治療の中心となるが使用量のエビデンスは乏しい。
  • 心サ症治療ガイドライン(日サ会誌2003,23(1):105-114)や本邦の他施設アンケートの結果(日サ会誌 2010; 30: 73-76)では標準的にPSL30mg(0.5mg/kg/日)が使用されているが、病態に応じてPSL60mg(1mg/kg/日)まで増量されている。
  • 初期投与期間を4週間とし、その後漸減、維持量として7.5mg以下を目標にする。
  • ステロイド不応または副作用で使用困難の場合はMTX5-7.5mg/週が単独またはステロイドと併用で用いられることがある。
  • 海外ではCyclosporinやCyclophosphamideの使用報告もある。(Medicine 2004;83:315-334
  • しかしステロイドだけで重度の心サ症が軽快することは稀である。
  • 従って高度/完全房室ブロックなどの徐脈性不整脈に対しては恒久的ペースメーカー埋めこみ、重度の心室性不整脈には抗不整脈薬やカテーテルアブレーション、埋め込み型除細動器が用いられる。
  • また重度の心不全に対して心臓再同期療法(Cardiac Resynchronization Therapy:CRT)が行われることもある。さらに心臓移植も考慮される。