溶血性連鎖球菌感染症の特徴

 溶血性レンサ球菌感染症には以下のような特徴がある。

  1. 病原性の強い菌も多いが定着菌のみの場合も多い。培養で検出された場合、病原体なのか定着のみかを判断する必要がある。
  2. 菌の酵素(毒素)などにより炎症が遷延し、抗菌薬が効いていても臨床的な効果は直ちに出ないこともある。
  3. リウマチ熱や糸球体腎炎など非感染性合併症も多い。

溶血性連鎖球菌の分類

血液寒天培地上の溶血パターンでα、β、γに分けられる。

 

溶血パターン

病原性

菌種

β

完全な溶血環

    groupAS.pyogenes

    groupBS.agalactiae

    その他(groupCgroupDなど)

α

 

不完全な溶血による緑色の溶血環

Viridans Strept(緑色連鎖球菌)と呼ばれる。

    anginosus group(膿瘍形成傾向あり)

(S.anginosus,S.constellatus,S.intermedius)

    mitis group(S.mitis,S.oralis,S.sanguis,S.gordonii)

    mutans group(S.mutans,S.sobrinus)

    salivarius group(S.salivarius,S.vestibularis)

S.pneumoniae(病原性は強い、Viridansとは呼ばれない)

bovis group(感染性心内膜炎、大腸癌と関係あり)

  S.gallolyticus,S.pasterurianus,S.infantariusS.lutrensis)

γ

溶血なし

血清型でD群と呼ばれる。かつては腸球菌が入っていた。(enteric strept.)

※同じ菌でも異なる溶血パターンをとることがある。(例:anginosus groupはβ溶血、bovis groupはγ溶血パターン)

A群β溶連菌感染症(化膿性連鎖球菌感染症)

細菌感染症と毒素による傷害、免疫反応に分けられる。

感染症

咽頭/扁桃炎、皮膚軟部組織感染(丹毒、壊死性筋膜炎)、心内膜炎、敗血症

毒素

猩紅熱、連鎖球菌性毒素性ショック症候群(TSLS

免疫反応

糸球体腎炎、リウマチ熱、溶連菌感染後反応性関節炎

1)咽頭/扁桃炎

  • 咽頭炎はウイルスが多いが10~20%は溶連菌である。
  • Center Criteria(発熱、リンパ節腫脹、滲出性咽頭炎、咳がないの3~4項目)で診断する。皮疹も高率に出現。
  • 迅速検査の感度は80~90%、特異度95%といわれる。
  • 抗生物質は10日間投与(15%で菌が残存)

2)皮膚軟部組織感染症:

  • 急速な進行が特徴で時間単位で変化する。またリンパ管炎が強い。傷がないところから発症。
  • 化膿性皮膚軟部組織感染症は黄色ブドウ球菌かA群β溶連菌かを考える

3)壊死性筋膜炎/毒素性ショック症候群

  • 見た目に比べ局所の圧痛が強い。ショックバイタル、多臓器不全をみたら考える。毒素性ショック症候群は必ず深部膿瘍があると言われる。PCG+CLDM、デブリドマン、γグロブリンで治療。

4)猩紅熱

  • 2~10歳の小児に好発。発熱、頭痛、咽頭痛、四肢痛、悪寒、紅色の小さな発疹が全身にできる。舌が腫れ、「いちご舌」となる事がある。

5)リウマチ熱

  • ほとんどが学童期以前に発症。溶連菌感染後1~3週間後に心炎、移動性多発性関節炎、舞踏病、有縁性紅斑、皮下結節が種々の組み合わせで出現。
  • 治療はペニシリン長期投与。

6)溶連菌感染後急性糸球体腎炎

  • 感染後1~3週間で血尿、蛋白尿、低補体血症、ASO上昇がみられる。

S.agalactiae感染症

新生児や糖尿病などの基礎疾患を持つ成人で蜂窩織炎、皮下膿瘍、筋膜炎、肺炎、骨髄炎、関節炎、菌血症、髄膜炎などを生じる

S.pneumoniae(肺炎球菌感染症)

  • 肺炎、副鼻腔炎、中耳炎、気管支炎、髄膜炎、腹膜炎、心外膜炎、蜂窩織炎、結膜炎
  • PCGの効果が実感できる感染症。
  • 肺炎では治療開始後炎症が強くなることもある。治療失敗を意味しない。
  • 髄膜炎以外ではペニシリン中等度耐性(MIC1~2μg/ml)は、通常投与量で治癒可能。
  • 肺炎球菌ワクチンがあり、小児、高齢者では接種が勧められる。